1KBの価値 コラムつき

1KBくらいの長さだとしても、書きたいと思ったものを書きたい。

別の2000年問題(ただし2020年限定)

重松清さんの『ビタミンF』を読みました。2000年に発行され、同年の第124回直木三十五賞も受賞しました。私は大衆小説的な作品を求める上で最もポピュラーな作品が並ぶ直木賞作品を意識して選んでいて、今作も前々から読もうと思っていましたが、だいぶずれ込んでしまいました。

 

当時のリアルタイムで30代後半くらいの人が主人公として描かれているのだけど、ある場面で少し考えさせられることがあった。あまり細かく書くとネタバレになってしまうのでその節は省くが、20年前(2000年)は当時の30代が振り返るところの80年代(=当時からみれば十数年前)より遠いことを考えてしまった。ミレニアムに敏感な私はその考え事で複雑な思いになってしまったのです。

いわゆる「少年」から「大人」になるよりも、「大人」になってからしばらく経った「中年」から「現在」の方がまもなく長くなるなんて、自分にはまだ遠いものだが、それでも確実に青春は過ぎているし、子どもの頃の十数年なんて自覚がないまま進んでいってることも、後になってわかってくるものだ。

当時の30代後半という前提で考えているが、少し上の年代にすれば「まもなく」でなく、すでに大人になってからのほうが長い時間が経っている。そりゃ、20年経っているから当然なのだが、まだ私は20年も昔と思いたくなかったり、たいして変わってないものと思いたいのかもしれない。

そもそもこの話題は、単に10年や20年周期に置き換えても当然のように成立する話だ。例えば2020年を「現在」としていても、2040年には2020年が先ほどの立場で言うと「2000年」とまったく同じ立場になってしまうわけである。

さっきからわざわざ当たり前のことを書いているのは、私が再確認したいことと、事実の重さがあるからだ。私や、同年代の人たちは2020年から2000年までの20年間を振り返ることが難しくても、2040年から2020年(あるいは、もう少し前)までの20年間を振り返ることは当然可能だろうから、未来とミレニアムへの愛情を込めました。

f:id:musashinokami:20200623005352j:image

ミレニアム周辺は、いつまでも追い求めていきたい時代。代表的なのは当時モノの映画やドラマ、ウェブサイトだけど、音楽や写真など、実際はなんでもいい。興味があればすべて別な見方ができるし、時には●●なんかも時代を読み解く重要な鍵になってくるので。夢というほどじゃないけど、いずれ今をミレニアムとその周辺の時代に重ねて見ることができたら最高だ。

ビタミンF(新潮文庫)

ビタミンF(新潮文庫)